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燃えよ剣(6)

燃えよ剣(6)
価格:¥ 5,250
出演:栗塚旭,舟橋元
おすすめ度
脱イデオロギーの矜持の高さ
『燃えよ剣』が放映されたのは、1970年大阪万博の年である。1955年から始まった高度経済成長は頂点を極めていた。しかし米ソの代理戦争は頻発し、核戦争の恐怖も現実のものとなっていた。左右のイデオロギー対立が深まり、革新自治体の登場がセンセーショナルに迎えられた。学園紛争はセクト間の抗争へと複雑凶悪化し、公害・差別等の重大な社会問題も多く抱えていた。こういった時代に鋭く切り込み、イデオロギー対立に『燃えよ剣』は大批判を加えている。  尊王攘夷を信奉しながら長州系の攘夷志士を討つ、という大矛盾に悩む近藤。一切の政治的な顧慮はせず、新選組を錐の様に鋭利な武器としておくことのみに専念する土方。虚無的で「ノンポリ」の代表のような沖田。それぞれの男達の生き方や、動乱の中でその幸せを奪われていく庶民を描きながら、浮かび上がってくるのは、1970年当時の観念的なイデオロギーを背景にした思想や行動の批判である。右であれ左であれ人間存在を忘れた理論や思想は、所詮根無し草であり足元を見据えたものではなく、人間の幸せに繋がるものではない、という主張がドラマの中をとうとうと流れる。しかも明治以来、政策的につくられ、宗教的タブーをも含んだ形で日本人の精神構造を規定してきた天皇制イデオロギーへの勇気ある批判にも繋がっている。これはおそらく、学徒動員で兵役に就いた原作者司馬遼太郎、特攻隊生き残りであった脚本家結束信二の戦争並びに敗戦体験から来る魂の叫びなのであろう。原作とドラマを流れる人間愛と脱イデオロギーの姿勢は、彼らの生と死の極限状況の体験からもたらされているのだと思う。

「第11話 真葛ヶ原の朝霧」 千石並みの槍の達人、谷三十郎の回。ふてぶてしい谷と爽やかな新入り隊士との対比。芸者富香役の和田幾子の大人の色香に目を奪われる。
「第12話 策士」  伊東甲子太郎登場。知的で端整で謀略の人、伊東を外山高士が好演。深沢重介暗殺場面の迫力。おけいの哀れさ。

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