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俺は用心棒(8)
出演:栗塚旭
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驚いたことに、司馬遼太郎はその代表作『竜馬がゆく』と『燃えよ剣』を同時に執筆していたという。能弁で明朗、既成の権威にとらわれない、南国の突き抜けた空の青さを写したような坂本竜馬と、寡黙で不機嫌、新選組という鉄の組織を創り上げ、節義を貫いた土方歳三という全く相反する人物像が同時に生み出され、いずれ劣らぬ魅力を放っていることはまさに驚嘆に値する。しかし同様のことが稀代の脚本家結束信二にもいえるのではないか。
『俺は用心棒』の主人公野良犬はどのような思想にも組せず、関心も持たず、群れることも一切なく、いつも孤独である。彼の行動は、彼自身の内面の道徳律にのみ従う。倒幕佐幕いずれにも興味を示さず、彼の目には、彼の目前で繰り広げられる人間の行為のみが写っているのである。せつな的で都会的であり、クールである。
方や土方歳三は組織の人である。自己の信条を組織の行動原理に拡げ、一つの人格としての新選組を創り上げた。その方向は一つであり揺るぎが無い。彼は常に遠くを見ている。節義を貫く、所謂「誠」の一字である。武州三多摩のマムシ臭い風土が、頑固で土の臭いがする骨太な男を産み育てた。
想像するに、野良犬は土方のような男が嫌いかも知れない。何となれば、新選組はだんだら染めを何故着用するのだろう、と問われて野良犬は、「死にたいからだろう」と答えているのである。
不世出の土方役者である栗塚旭は、同時に永遠の用心棒役者でもある。相反する二人の男だが、どちらも栗塚しか演じられないところに痛快さを感じる。
「第15話 だんだら染め」尊攘派浪士と闘う品田万平がカッコいい。最後の野良犬の台詞が頭に焼きつく。土方に是非聞かせてやりたい。
「第16話 志士の写本」鯖寿司を手に自ら牢に入る野良犬がおかしい。写本を仕事にしている青年が清清しい。ロケに2時間の大遅刻をした大女優嵯峨三智子には、鬼の河野監督ですら笑って挨拶をした、という撮影裏話付き。