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黒澤 明 ドラマスペシャル 生きる

黒澤 明 ドラマスペシャル 生きる
価格:¥ 4,935
出演:深田恭子,北村一輝,ユースケ・サンタマリア(友情出演),松本幸四郎
おすすめ度
主役は松たか子の父ですから、念のため、
黒澤明作品の主人公の多くは劇中で変化しない、黒澤映画は主人公の成長や変化を描かない作品が多い、その性向は全盛期である「悪い奴ほど」「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」にとりわけ顕著だとおもう、悪い奴はとことん悪い・善人は常に善人・強いものは徹頭徹尾強く弱いものはなにがどうなろうと弱さゆえに滅んでゆき、サイコな人物は常にサイコであると、

評者自身が若い頃に黒澤作品に強い魅力を感じなかったのはおそらくは以上のようなまるで変化や成長を省略したような作風に違和感を感じたからだとおもう、当時も今も我が生涯のアイドル、デビッド・ボウイは彼の人生のすべてに変化を義務付けたし我が最愛のロック・バッド、レッド・ゼッペリンは唯の一枚も似たアルバムを発表することはなかったのだから、

それでも年月を経た現在では黒澤映画にはそれなりの魅力を感じるようにはなった、現実の世間や人生はまさにそのとおり理不尽なものだと私もおもうしそれで仕方がないものだとも強く感じる、それでも映画等の何がしかの表現なり物語に自らの意志で接するのは描かれた主人公達の変化と成長に感激したいからなのだ、黒澤映画が描いた圧倒的な「物語」の魅力が王道中の王道であり未来永劫観客を引き付けることは間違いないが、登場人物一人一人はあくまでも物語の部品でしかないとおもう、

小津「晩春」のクライマックスで原節子が見せる迫力のような演技者個人の魅力はなぜか黒澤映画のフィルム上では小型化されてしまう、黒澤映画がこれほど魅力的でありながらなぜか登場人物のキャラが一人歩きしないことにもっと多くの人が気付いてもいい、前記4作の成功も三船がいたからこそともいえるだろうし、何作ものリメイクが面白さはあるもののいま一歩不足の印象を与えるのも誰も三船に及ばないからである、黒澤を師と仰ぐジョージ・ルーカスが物語以上に登場人物のキャラクターやメカニックの魅力の「独り立ち」に苦心したのは実に懸命だったのだ(だからこそスターウォーズ・サガは神話になれた)、

主人公が変化しようとあがく「生きる」は皮肉な物語である、50年経過しても色褪せない木っ端役人の世界観が黒澤作品でもっとも成功したリメイクになってしまったのだから本作のもつやるせなさは累乗されてもいるわけだ、主演の幸四郎はそうだ、このキャスティングがあったのだと、と思わず拍手してしまうほど適役、本作の成功はユースケ以下誰一人ミスキャストがいないことにつきる、とりわけ深田恭子と北村一輝が適役すぎるほどのはまり役、現在だからこそ可能だった見事なリメイク作品です、

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